アパートの一室で、住人が深夜に掃除機を動かしているという苦情が相次いだ。
「壁越しにずっと低い唸り声のような音が響いている」と隣人は証言している。
管理人が翌朝部屋を訪れると、玄関は施錠されたまま。
しかし中からは確かに「吸い込む音」が続いていた。
警察立ち合いのもと扉を破壊した際、部屋の中央には黒いキャニスター型の掃除機が置かれていた。
コードはコンセントに繋がっておらず、床には吸い込まれた痕跡のように円形の擦れ跡が残っていた。
住人の姿はなく、家具も一部が欠け落ちたように消失していた。
唯一残されていたのは、吸引口に挟まっていたメモ用紙で、その表には走り書きで**「■■■から手を離すな」**と書かれていた。
アイテム番号: SFP-8129《無尽吸》
オブジェクトクラス: 禍
特別収容プロトコル
SFP-8129は耐衝撃性ケースに収容し、使用実験は厳重に制限される。
対象の稼働は必ず遮音室内で行い、観察は遠隔カメラを介して行うこと。
電源を供給していない状態でも稼働を開始するため、物理的なコンセント遮断は無効。
説明
SFP-8129は外見上、国内メーカー製のキャニスター型掃除機に類似する。
異常性は以下の通りである。
- 電源供給の不要性
プラグが接続されていなくても稼働を開始する。
稼働音は通常よりも低く、遠方でも聞き分けられる。 - 吸引範囲の拡張
対象の吸引口に近づけた物体は通常の物理法則を無視して引き寄せられる。
家具や床材など固定されたものも、断面を残して消失する。 - 人間への影響
対象を操作した被験者は「手を離せない」と訴え、強制的に切り離すまで延々と稼働を続ける。
取り押さえた被験者は、以降「吸い込まれる夢」を繰り返し見ると報告している。
補遺 8129-β: 実験記録
- 実験04
木製椅子を対象に接近 → 一部が真円状に消失。断面は滑らかで加工痕なし。 - 実験07
被験者が対象を操作中に「■■■■■が見える」と発言。
直後、吸引口内部から強い気流が発生し、観察装置のカメラ映像がノイズで途切れる。 - インタビュー記録(抜粋)
研究員:「なぜ手を離せなかった?」
被験者:「……もし離したら、■■に吸い込まれるって分かったんです。」
関連する実在アイテム(参考リンク)
※以下は通常の商品であり、異常性は存在しません。
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