彼がそれを目にしたのは、中古ゲームショップの片隅であった。
人気のゲーム機で、抽選に当選しないと買うことすらできないはずのそれがなぜか中古ショップにあることに驚きだった。
奇妙なのは、その筐体に刻まれたロゴが削り取られたように消されていたことだ。
表面には子供の落書きのような記号と、 「■■■■」 という文字が刻まれていた。
入手困難なゲーム機ではあるが、落書きと傷の具合を見ると買うのをためらった。
彼は店員に「これの保証期間は残っていますか?」と尋ねた。
店員は視線を逸らし、しばらく沈黙してから「……気づいたら、そこにあったんです」とだけ答えた。
彼は胸の奥に奇妙なざわめきを覚えながら、衝動的にそのゲーム機を買ったのだった。
帰宅後、彼は早速ゲーム機の電源を入れる。
サイズは一般的なノートよりやや小さく、両端に取り外し可能なコントローラーが装着されていた。
電源を入れると、どこかで聞き覚えのある起動音が鳴った。
しかし画面に現れたメニューは、見覚えのないアイコンばかりであった。
その中に見慣れた文字が目に入った。彼のフルネームが記載された項目だ。
たまたま以前の持ち主が同姓同名だった?
いやまさか。
恐る恐るそれを選ぶと、画面にはある部屋の風景が映し出された。
それが自分の部屋のものだとわかるまでしばらくかかった。
壁紙も、本棚も、机に置かれたカップも──すべてが忠実に再現されていた。
ただ一つ、違っていたのは、窓が真っ黒に塗りつぶされていることだった。
一体これはどういうことなのか―?
気味が悪くなりゲーム機の電源を落とそうとした瞬間、
画面の中の部屋のドアが勝手に空いた。
彼はとっさに自分の部屋のドアを振り返る。
しかし現実のドアは閉じたままだ。
少しホッとして再びゲームの画面に目をやると、部屋の中には歪んだ黒い人影が立っていた。
そしてゲーム機から低い囁き声のようなものが漏れ出してきた。
最初は何を言っているのか聞き取れなかったが、同じことを繰り返しているようだ、
だんだん聞き取れるようになってくる。
「■■を見たな」
数日後、彼の部屋からはそのゲーム機と、おびただしい数の■■■の死体で部屋は真っ黒だったという。
アイテム番号: SFP-6427《幻遊機》
オブジェクトクラス: 禍
特別収容プロトコル
SFP-6427は遮音・遮光処理を施した収容室に隔離され、起動は禁止されている。
いかなる状況下でも人間による直接操作は禁止とし、必要な実験は遠隔操作端末を介して行うこと。
画面に「利用者の名前」や「■■■■」が表示された場合、実験は即座に打ち切られる。
説明
SFP-6427は外観上、一般的な携帯型ゲーム機に酷似している。
しかし既知のメーカーのロゴやシリアル番号は確認されておらず、削り取られた痕跡のみが残っている。
異常性は以下の通りである。
- 個人情報の反映
起動時のメニューに、利用者の氏名が自動生成された項目が現れる。 - 現実空間の再現
ゲーム内に利用者の生活空間が精密に再現される。
ただし、一部の要素(窓や扉など)が黒塗り状に表現されることが多い。 - 不明な存在の出現
一定時間経過後、画面内に黒い人影が現れる。
人影は音声で「■■」などの単語を発することが確認されている。 - 実害の発生
長時間使用後、利用者の居住空間で小動物や昆虫の死骸が大量に出現した事例がある。
死骸はすべて炭化したように黒く変色していた。
補遺 6427-γ: 実験記録
- 実験04
被験者が自身の名前を選択した結果、画面に研究室の映像が再現される。
現実のカメラ映像と比較すると、画面内には存在しない扉が黒く塗り潰されていた。 - 実験07
遠隔操作で起動。ゲーム画面に「■■■■」という文字列が点滅。
同時刻、収容室の外で昆虫の死骸が多数確認された。 - 実験11
放置状態で24時間後、画面に黒い人影が出現。
影は視線をカメラに合わせ、低い声で「■■を見たな」と繰り返した。
その後、実験室に黒く変色した小動物の死骸が散乱。
関連する実在アイテム(参考リンク)
※以下は通常の商品であり、異常性は存在しません。
注意
- 本記事はフィクション(異常性設定)と実在商品の紹介を組み合わせたものです。
- 実在商品は異常性を持たず、通常の製品です。
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