カメラ好きの彼は、発売されたばかりの RICOH GR IV を手に入れた。
評判通りの起動の速さと軽さに満足しながら、彼は夜明け前の街に出た。
湿ったアスファルトが街灯の光をぼんやりと反射し、人影はまばらだった。
最初の一枚を切ったとき、彼は確かに“気配”を感じた。
振り返っても誰もいない。ただ背後のシャッターの閉じた商店街が広がるだけだ。
液晶モニターを確認すると、画面の隅に黒い影が写っていた。見覚えのない、人の輪郭のような形だった。
二枚、三枚とシャッターを切るうちに、違和感は次第に濃くなっていった。
通り過ぎたはずの人々が、写真の中では立ち止まり、無言で彼を見ている。
交差点の電光掲示板は、現実よりも数分遅れた時刻を示していた。
帰宅後、彼は写真を整理した。
モニターに並んだ何十枚もの写真のすべてに、共通のものが写り込んでいた。
黒い影だ。それは最初はかすかな塵のように写っていたが、最後の一枚では彼のすぐ背後にまで迫っていた。
翌日、彼は友人にそのデータを見せようとした。
だがUSBメモリの中身はすべて白紙で、ファイル名だけが残されていた。
そこには文字化けしたような記号が並んでおり、その中で唯一判読できたのは、「■■■■」という四文字だけだった。

アイテム番号: SFP-7421《幽影鏡》
オブジェクトクラス: 揺
特別収容プロトコル
SFP-7421は遮光ケースに収容され、外部との接続は禁止される。
実験はレベル3以上の職員2名の立会いのもとで行われる。
対象を通して撮影された映像データは即時プリントアウトし、電子記録は速やかに削除される。
説明
SFP-7421は外見上、一般的なコンパクトデジタルカメラGR IVに酷似する。
異常性は「レンズを通して見える映像」と「肉眼で見た光景」が一致しない点にある。
- 表情の変化
ファインダーを通した人物は無表情化、あるいは視線を送ってくる。 - 時間のズレ
時計や表示板は現実より数分遅れて映る。 - 撮影画像の異常
背後に存在しない人物や黒い影が写り込む。
補遺 7321-β: 実験ログ
- 実験03
被験者が研究員を撮影 → ファインダー上では笑顔だったが、写真では無表情だった。 - 実験07
廊下を撮影した結果、プリント写真に「■■■■■■■■」と判別不能な黒塊が出現。観察者全員が強い吐き気を訴えた。
関連する実在アイテム: RICOH GR IV
※以下は通常の製品であり、異常性は存在しません。
- RICOH GR IV (公式発表)
- 発売日: 2025年9月12日
- レンズ: GR LENS 18.3mm F2.8(35mm換算28mm相当、色収差抑制設計)
- 撮像素子: 裏面照射型APS-C CMOS、有効約2,574万画素
- 手ぶれ補正: 新開発5軸SR搭載、暗所でも安定した撮影
- 起動速度: 約0.6秒、高速起動によるスナップ対応
注意
- 本記事はフィクション(異常性設定)と実在商品の紹介を組み合わせたものです。
- RICOH GR IVは通常の製品であり、異常性を持ちません。
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